天一の日

「どんな体型でもきみは可愛いし大好きだよ」

 

今までそんな風に宣った男たち。

お前らはどうせ私が歩く焼豚ならまず視界にすら入れなかったんだろうな。

 

そう思いながら久々のラーメンのスープを飲み干した。今日は天一の日だ。

 

九月末日、年始から付き合っていた彼氏と別れた。

きっかけは音楽性の違いとか方向性の違いとかまあそんなところだった。

 

彼氏ができると私は大好きなラーメンをほとんど食べなくなる。

自慢の彼女でいたい、可愛いと思われたい。

そうやって無意識に体に良い野菜や糖質の少ないものに手を伸ばすし、狂ったように筋トレをする。まさに献身欲と承認欲求の妖怪である。

塩分も脂質も暴力的なこってり系ラーメンなんて以ての外だった。

 

そんな生活が終わった。

 

この一杯はその象徴と言える。

久々に喉を通ったドッロドロのスープは、

「男のため」が一切ない自由の味がした。

 

私が人生で本当の意味で一番自由だった頃、毎日のように通っていた一乗寺のラーメンを思い出した。

 

自分の心を満たすためだけに摂取するラーメンは度し難い美味さがあった。

形振り構わずカロリーと手を繋ぎ、自由と熱い抱擁を交わすことが許されるなら侘しく感じがちな独り身もまた楽しいものである。

 

近いうちに北白川の本店にでも行くことにしよう。

 

おわり