赤い爪
剥げたペディキュアを彼が慣れない手付きで塗り直してくれている。
その間に久しぶりの更新を済ませてしまおう。
今年に入ってから体調を崩し、少し前から彼の家にお世話になっている。
始業時間ギリギリまで寝て、リモートで仕事をして、たまにきちんと料理して、休日は一緒にゲームしたり、映画を観たりしてゆっくり過す。やや自堕落。
ある日、外に出ないからと彼の足にペディキュアをさせて欲しいとねだったら何の抵抗もなく快諾され、せっせと彼の白い足に色を乗せた。
赤みの差した色白なその足先は、黄黑い私の足に比べ何倍も赤い爪が似合った。
彼との生活は穏やかで、優しく、誰も私を家政婦にしないし、殴らないし、わざと陰口を聞かせてきたりしない。天国かと思う。ニアリー桃源郷。
しかしながらこうも長年メンをヘラしていると隠れミッキー探索職人を遥かに凌ぐ探索能力を発揮して小さな不幸を自覚しにかかろうとするし、もはやそれも半ば言いがかりに近い上に全盛期に比べ感性もボキャブラリーも大層劣化しているため何に昇華するでもなくシンプルに病む。地獄。南無三。
いい加減シンプルに幸せになりたい。
誰か私を助けて欲しいし私の辞書から元カノという言葉を消してほしいし、生まれつき高い鼻筋が顔面をハイウェイしてることにしてほしいし、ついでに学歴を旧帝とは言わんからせめて同志社にして欲しいし、彼と浮名を流した女は全員異世界転生するか別の世界線に移動して欲しい。
くだらないことを書き始めたあたりでトップコートが乾いた。
自分でするより若干上出来なペディキュアに、相変わらず器用だなと感心しつつちょっとムカついた。